脱炭素社会で「核心的役割」 ヒートポンプ蓄熱で省エネ推進

2021年7月11日

【ヒートポンプ蓄熱の新潮流/最終回

世間を賑わす「脱炭素」に向けて、ヒートポンプ蓄熱システムはどのような役割を果たすべきか―。

太陽光とエコキュートを組み合わせた宮古島の事例

ヒートポンプ・蓄熱センターが毎年7月に主催する「ヒートポンプ・蓄熱月間」。1998年に始まったこの活動は、省エネや負荷平準化に貢献するヒートポンプ蓄熱システムを導入した企業・団体に感謝状を贈るものだ。当初、数件だった贈呈先は、6年目に50件を突破。以後、毎年50~100件がその対象となっており、これまでの累計数は1500件程だ。「東日本大震災までは年々電力需要が伸び続けていました。そうした中、ピークカットや省エネに貢献していただいたお客さまには大変に感謝しています」(同センターの石川佳英事務局長)。

そんなヒートポンプ蓄熱にも今後、新たな役割が加わりそうだ。一つは再生可能エネルギー主力電源化を見据えた位置付けだ。再エネの余剰電気をヒートポンプや蓄熱槽で吸収する制御で、再エネ電気を無駄なく使う。そして、もう一つが、電力システム改革の流れで今年度から始まった電力需給調整市場への貢献だ。ヒートポンプ蓄熱を使ったDR(デマンドレスポンス)やVPP(仮想発電所)による新市場への貢献が期待されている。

「新たな役割については認識していますが、前提となるのがまずは省エネを進めること。特に固定価格買い取り制度の賦課金の負担が、今後重くなると思います。その際、まずはヒートポンプによってエネルギーの消費を抑えることで、その負担を少しでも減らせます。そのことが再エネ主力電源化に寄与し、結果的に脱炭素が進むと思います。その一翼を、ヒートポンプ蓄熱による電化システムが担いたい」(同)

次項以降では今年感謝状が贈呈された導入事例を紹介するほか、同センターの蓄熱専門委員会委員長である奥宮正哉氏のインタビューを掲載し、省エネに寄与するヒートポンプ事情を追った。

〈品川熱供給〉

電力とガスのベストミックス運用 「改修」と「見直し」で高効率を実現

品川インターシティのエネルギー供給を担う「品川東口南地区地冷」。

大規模改修と既存システムの見直しで、COPの改善を果たしている。

 山手線、東海道線、東海道新幹線など日本の大動脈が通過し、2027年には中央リニア新幹線の始発駅も計画される交通の要衝・品川駅。同駅港南口のペデストリアンデッキを渡ると、同地がビジネス街へと変貌を遂げるきっかけとなった品川インターシティの3棟がそびえ立っている。この高層ビル群のエネルギー供給を担うのが、「品川東口南地区地域冷暖房」だ。

品川インターシティと食肉市場(右下)

 同地冷は1998年11月の品川インターシティ完工と同時にプラントの供用を開始。品川インターシティのA・B・C棟と商業施設が入居する低層棟に冷温水と蒸気の供給をスタート。4年後の02年からは設備を増強して、ビル群に隣接する東京都中央卸売市場食肉市場のセンタービルにも冷水および蒸気の供給を開始した。

 プラントは品川インターシティC棟の地下3階に設けられており、広さは約4400㎡。蓄熱槽の容量は冷水が2200㎥、冷温水が2300㎥の合計4500㎥。多数のオフィスが入居する高層ビル群のエネルギー需要を一括して管理することで、電力負荷の平準化や地域のエネルギーの有効活用、環境負荷軽減に貢献している。

供給フロー

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