【東邦ガス 増田社長】持続可能な社会の実現と中部地区のさらなる発展に技術とサービスで貢献する

2021年8月1日

志賀 電力・ガスの市場競争についてはどう見ていますか。

増田 電気については、おかげさまで想定を超える数のお客さまにご利用いただけるようになり、契約数は45万件を超えています。これもひとえに長年にわたる当社グループの安心・安全への取り組みなどを多くのお客さまに評価いただいた結果と感謝しています。

金沢市ガス民営化 異色コラボレーション

志賀 ゼロカーボン時代は電気の質も問われます。中部電力は、浜岡原子力が再稼働するとその点で先行することになります。御社として再生可能エネルギーで対抗していくことになると思いますが、その戦略をどう描いていますか。

増田 今後、再エネ由来の電気を自社電源として調達するべく力を注いでいくことは間違いありません。そのために、この4月に専門組織を立ち上げ、「2050年カーボンニュートラルへの挑戦」の中では、再エネ電源の取扱量を30年までに50万kWまで拡大させる目標を掲げました。

専門組織を立ち上げ、再エネ由来の電気の調達にも注力

志賀 金沢市のガス事業への参画に当たっては、非常にユニークなコラボレーションを組みました。

増田 金沢市とは、日本ガス協会の地方部会「東海北陸部会」という同じグループとして燃料転換にも一緒に取り組んできました。また、LNGの供給や保安、災害対応などでも協力してきており、これまでも非常に強い関係がありました。北陸新幹線の駅が完成し、金沢という町自体が発展していく余地があり、水力発電所も一体で譲渡されることも魅力と考え、企業グループの一角として関わっていきたいと考えました。

 ガス事業は地元に密着した事業であり、東邦ガスが単独で取り組むよりも、北陸電力さんや地元の銀行、新聞社など6社が企業グループを組み譲渡を受けることが望ましいと考え、今回の形となりました。都市ガスのみならず、電気を含め新しいビジネスの可能性が広がりますし、東邦ガスグループの拠点としての意義も大きいと期待しています。

 われわれガス業界は、地元密着を非常に大事にします。金沢で事業を展開するに当たっても、地元の方に選んでいただけるサービスを提供し、地元経済の発展に貢献していきたいと考えています。

対談を終えて

世のため人のためになる仕事から東邦ガスに入社。若い時分は数多くの現場で経験を積む過程で、チームワークを大切に、常に最悪の事態を想定し、手を打つ。それがほとんど徒労に終わっても、これが安定供給につながると確信した。先般公表した「2050年カーボンニュートラルへの挑戦」では、ガス供給の使命に変わりはなく、事業継続の中で持続可能なシナリオを作ると、豊富な現場経験者ならではの、地に足の着いた戦略を描く。技術系経営者の自信がうかがえる。(本誌/志賀正利)

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