【関西電力 森本社長】原子力と再エネの両輪で エネルギーの安定供給と脱炭素社会に貢献する

2021年9月1日

世界が脱炭素化へ大きくかじを切る中、その鍵を握る原子力と再エネに注力する。水素など新たな火力燃料の実現を主導するべく、イノベーションにも果敢に挑戦する。

もりもと・たかし 
1979東京大学経済学部卒、関西電力入社。2015年常務執行役員総合企画本部長代理、
16年取締役副社長執行役員などを経て20年3月取締役社長に就任。
同年6月から取締役代表執行役社長。

志賀 8月2日に美浜発電所3号機、高浜発電所1、2号機、大飯発電所3、4号機について新たな運転計画の見通しを発表しました。これまでと何が変わりましたか。

森本 これまで特定重大事故等対処施設(特重施設)の早期完成に向け、関係者のご協力を得ながら努力を重ねてきました。施設の運用開始時期については「検討中」とご説明してきましたが、今般、運用開始の見通しが立ちましたので、発電所ごとの運転再開、再稼働時期と合わせて発表いたしました。美浜3号機と大飯3、4号機は2022年内、高浜1、2号機は23年の運用開始を計画しています。大飯4号機を除き、設置期限を超えることにはなりましたが、これからも気を引き締めて完成に向け工事を進めていきます。

安全安定運転積み重ね 原子力への信頼高める

志賀 6月には運転開始から40年を超えた美浜3号機が10年ぶりに再稼働しました。その意義についてはどうお考えですか。

森本 地元のご理解を得て、新規制基準施行後、40年超のプラントとして全国で初めて稼働させることができました。今夏は猛暑が続き、安定供給に大きく貢献できますし、将来のゼロカーボン社会実現に向けた意義も大変大きいと考えています。

 一方で、17年前に、美浜3号機において5名もの方が尊いお命を亡くされ、6名の方が重傷を負われるという、大変な事故を発生させてしまいました。当社は発生の8月9日を「安全の誓い」の日と定めています。今年も私を含め関係役員が、美浜発電所構内の「安全の誓い」の石碑の前で、安全の徹底を固く誓い、全員で献花・黙とうを行いました。地元のご理解があってこそ原子力事業を担えるのであり、安全はあらゆる事業活動の基本であることを心に刻み、これからも安全最優先で取り組んでいきます。

志賀 ビル・ゲイツ氏が安定的なゼロカーボン電源は原子力しかないと発言したそうです。ところが第六次エネルギー基本計画では、原子力の位置付けがあいまいになったと言わざるを得ません。

森本 エネルギー基本計画案に対して、様々な意見があると承知しています。50年に向けゼロカーボン社会をどう作っていくのか、また、30年度CO2排出量46%削減へのプロセスを考える上で、さまざまな選択肢を追求していくという観点で示されたものと受け止めています。原子力に対しては厳しい受け止めをされる方も多いですが、安定供給とゼロカーボンへの貢献に向け、安全・安定運転の実績をしっかりと積み重ねていくことで、一人でも多くの方に安心していただけるよう努めていきたいと考えています。

志賀 原子力は将来、新規開発に取り組む必要があります。敦賀3、4号機は現実的なプロジェクトかと思いますが、日本原電単独では難しい。メーカーを巻き込んだPWR(加圧水型炉)グループを作るのも有力かと思うのですが、いかがですか。

森本 原子力の新増設については、現段階でエネ基に示されていません。まず私たちは、将来に備えて既存設備である美浜、高浜の40年超運転を含め実績を確実に積み上げていくことで、原子力への信頼を高めるために地道に努力していかなければなりません。

 一方で、将来に向け、エネルギーセキュリティーなどの観点から、裾野の広い日本の原子力産業、そしてそれに支えられた高度な技術を維持していくためには、東京電力福島第一原子力発電所事故の反省を深く胸に刻み、安全について新しい試みにも果敢に挑戦し続け、たゆまず向上させていかなければなりません。

 将来にわたり、原子力発電を一定規模確保するために、日本全体でどう取り組むのかについては当然、考えていかなければなりません。当社もしっかりと役割を果たせるよう、将来への備えを万全にしていきたいと思います。

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