【関西電力 森本社長】原子力と再エネの両輪で エネルギーの安定供給と脱炭素社会に貢献する

2021年9月1日

海外の風力開発に参画 国内開発に知見生かす

志賀 やはり、今後の再エネ開発は風力が中心になりますか。

森本 再エネと原子力というCO2フリー電源を供給力の両輪とするため、再エネについて国内外で200万kWを新規開発する目標を掲げ、取り組んでいます。風力は、英国やフィンランドにおけるプロジェクトに出資をする形で参画しています。国内の場合、適地が限られており、国が期待する洋上風力の知見を高めるためにも、こうした海外での経験を生かせると考えています。当社以外にも多くの企業グループが洋上風力開発に挑戦しようとしていますが、当社もプレーヤーとして活躍できるよう努力していきます。

志賀 太陽光については。

森本 当社は、堺市でメガソーラー事業に初めて取り組み、その後もグループ会社を含め地元のご理解とご協力を得ながら各地で開発を進めてきました。国土面積や適地から見ると日本でも開発が進んでおり、これからは現状の設備を維持しながら、継続的に事業を進めていくことがより一層重要になります。それができる責任ある事業者が、太陽光事業に携わっていかなければなりません。今までは再エネは全て良いものだとして社会に受け入れられてきましたが、今後はそれぞれの電源の長所を生かしつつ、組み合わせて使うことで弱みをどうカバーするかという健全な議論が行われることを期待しています。自治体によって規制の在り方はさまざまですが、どこで事業を手掛けるにしても発電事業者としての責任を持って取り組んでいきます。

志賀 非効率石炭火力のフェードアウトの進め方についてのお考えをお聞かせください。

森本 効率の低い石炭火力から徐々にフェードアウトしていく方向性が示されていますが、石炭火力はベースロード電源として大切な役割を担っていますので、燃料のCO2フリー化、もしくはCO2の回収や再利用など、複線的に考えていく必要があります。CO2排出量を減らすためには、バイオマスやアンモニア、水素混焼も有効と考えており実証に取り組む方針です。「ゼロカーボンビジョン2050」を発表した際にも、長期的な安定供給の確保、まさにS+3Eのバランスを確保していくために火力にもしっかり取り組むことを挑戦項目として挙げました。個別のプラントで考えるのではなく、会社全体としてCO2排出量を減らしながら、供給力、競争力を踏まえて総合的に判断していくことになります。

志賀 脱炭素化に向けたトランジションの鍵を握るLNGですが、世界的な位置付けが不透明です。

森本 LNGをどう活用していくかは、今後ますます難しい経営課題になります。電力の卸取引市場に再エネ由来の低廉な電気が大量に入ると、火力は可変費相当のマーケットで戦えず、LNG火力の稼働は今後さらに低下する可能性があります。そのような状況下、燃料調達の観点では、現在のように比較的長期の契約に比重を置くのではなく、スポットでの燃料調達を増やす選択肢も考えられますが、スポット調達に依存し過ぎると、いざというときに燃料を調達できず、発電所を稼働できない恐れもあります。したがって、競争力向上に向けた燃料調達とそのためのコスト低減について、しばらくは状況を見極めながら取り組んでいく必要があると考えています。

1 2 3 4