【関西電力 森本社長】原子力と再エネの両輪で エネルギーの安定供給と脱炭素社会に貢献する

2021年9月1日

ゼロカーボン達成へ 実証と評価が重要

志賀 カーボンニュートラル実現に向けた具体的な戦略とは。

森本 50年のゼロカーボン社会の実現に向け、事業者としては、さまざまな状況変化や技術の進歩といった不確実性が伴う中で取り組んでいくことになります。当社は、「ゼロカーボンビジョン2050」で示した通り、エネルギー供給を再生可能エネルギーと原子力の両輪で担いながら、調整電源として必要となる火力について、ゼロカーボン燃料への転換や、CO2の回収、貯留、または再利用に取り組むなど、複数の選択肢を大切にしながら進めるとともに、水素という新しい燃料の利用にも挑戦していく方針です。目標を達成するためには、実証と評価を繰り返しながら取るべき方向性を絶えず議論し、最善の選択をしていくことが重要だと考えます。

志賀 将来の技術の可能性にかなり依存した挑戦になりますね。

森本 イノベーションは非連続であり、大きな効果をもたらす可能性があり、大いに期待しています。水素にしても、火力のゼロカーボン燃料としてのアンモニアにしても、実証し、それを評価することで、コスト面も含めてリアリティーのあるものとしてシステムに組み込んでいかなければなりません。これらの新しい燃料を安定的に供給するためのサプライチェーンを構築するためには、当社のみならず多くの分野の事業者による挑戦が欠かせません。また、エネルギーをどのように使うのか、需要サイドの取り組みについてもユーザーの皆さまと一緒に考え、そのニーズを踏まえた日本の新しいインフラを共に創り上げていきたいと考えています。

志賀 どのような水素利用の在り方を考えていますか。

森本 水素事業に関する戦略の検討・立案や実証判断などを一元的に担う体制として、責任主体の明確化を図るとともに、効率的かつ効果的に事業化に向けた取り組みを進めるため、本年4月に水素事業戦略室を新たに設置しました。水素利活用に関する取り組みは複線的ですが、発電事業者でもある当社がまず期待されていることは、火力発電所で燃料として水素を利用することです。それだけではなく、水素は輸送分野も含めて多様な使われ方が進んでいくと考えられるので、供給者として、サプライチェーンの中で一定の役割を果たすことも目指します。特にこれまで電気エネルギーがあまり使われてこなかった輸送分野において、電気自動車(EV)が普及しつつありますが、電気で賄えないところは水素が有力な選択肢になると考えています。そうした未来の姿を多くの方に見ていただきたいと考え、25年に開催される大阪・関西万博に向け、水素燃料電池船の実現などに関する取り組みも進めています。

 現時点では、再エネ由来のグリーンな水素を一定量確保するためには、化石燃料と同様に海外から調達する必要がありますが、過度な海外依存は避けなければなりません。その点、原子力と水素は相性が良い部分があり、海外では、原子力を利用した水素製造の研究開発が始まっています。当社としても、原子力の電気で水素を製造するなど、原子力と水素の両立を模索していきます。

志賀 それは高温ガス炉を想定しているのでしょうか。

森本 早期に実現できるのは電気分解だと考えていますが、将来は高温ガス炉のようなシステムも選択肢に加わってくるものと考えており、今後の技術革新に期待しています。

火力発電の活用に向け燃料の脱炭素化に挑戦する(写真は舞鶴発電所)

1 2 3 4