【電源開発 渡部社長】カーボンニュートラルに「CO2フリー発電」で挑み新たな価値創造へ

2021年11月1日

志賀 もう一つ大きいのが原子力の問題です。大間という貴重な炉を建設していますが、原子力政策の正常化がなかなか進まない状況への地元の反応はいかがですか。

渡部 大間は、CO2フリー電源として、さらにMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を全炉心で使用できるため、原子燃料サイクル政策の中核を担う発電所です。地元にはずっと待っていただいています。まずは新規制基準への適合性審査を着実に前に進めることが大事で、現在は地震・津波の審査、特に基準地震動の策定に向けた審査に取り組んでいます。必要性だけでなく、実際に事業が動いていくことが原子力に関する国民的コンセンサスを醸成する第一歩になると思います。

志賀 その通りですね。そして大間だけではありませんが、現地の職員は災害時の復旧対応などさまざまな活動を行いますよね。

渡部 8月の大雨で近隣の道路が寸断された際には、当社社員も災害復旧のために援助活動に参加しました。

志賀 地元への貢献含め、日本のために原子力はやはり必要です。大間の運転開始を心待ちにしています。
 カーボンニュートラルの実現に向けては再エネの積極展開も欠かせませんが、その進捗を教えてください。

陸上風力をリプレース 洋上にも意欲的に

渡部 地域共生が前提となりますが、太陽光や風力だけでなく、中小水力の開発や、地熱などの有望地点もまだあります。また、当社では運開から20年程度を経過した風車の更新工事を順次進めており、既設の古い風車を大型でより効率的なものに建て替えることで、事業性の向上を目指しています。周辺に産業のサプライチェーンがない地域においては、風力は産業立地という側面も有しています。地域の方々と、人間関係を含めて長くお付き合いしていきたいと考えています。
 このように再エネ事業を長期に渡って地域に定着させていくことで、一層の再エネ拡大を目指していきます。当社では25年度までに17年度比で150万kWの再エネ新規開発を目標とし、国内外問わず、また洋上風力も含めてトライしているところです。

電源開発が出資するトライトン・ノール洋上風力


志賀 その洋上風力の手応えはいかがでしょう。

渡部 競争は激しいですが、一つひとつの案件を確実にものにしていきたい。大きな課題の一つは経済性です。当社が出資する英国のトライトン・ノール洋上風力は遠浅かつ海底の地盤条件が良く、着床式を設置しやすい環境です。一方、日本は遠浅の地点が少ない。当社の国内洋上風力も着床式で検討していますが、経済性を十分に検討する必要があります。

志賀 太陽光は対象外でしょうか。

渡部 国内においては具体的な案件は実現していませんが、社内で検討はしているところです。一方で、海外では米国テキサス州などで現地企業と組んで太陽光発電事業に参画し、また豪州や中国の出資先企業も太陽光発電事業を手掛けています。

志賀 各地でのメガソーラーの不適切事案や、将来のパネル廃棄問題なども危惧されます。最後まで責任をもって適正に事業をやり遂げることができる企業が権益を買い取るような展開も期待したい。
 水力で新たな取り組みはありますか。

渡部 大規模水力を新規に開発することは難しいですが、ダムは適切に保守管理すれば100年以上持つと言われています。そのため、ダム本体よりも先に機器が老朽化するので、それを最新の効率の良い機器に一括更新することで出力や発電量を増加させる取り組みを順次進めています。水力はCO2フリー電源であり、全国約60カ所の水力をどんな順番でどの程度アップサイクルしていくか、考えていきます。
 他方、異常気象の頻発でダムの治水機能へのニーズが高まっており、河川管理者とダムの運用ルールについて協議しています。大雨に備えて事前放流を実施することで貯水容量を空けるといった運用は一部で既に実施しています。

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