【北陸電力 松田社長】ゲームチェンジ見据えお客さまに喜ばれるソリューション提供へ

2021年11月1日

経営環境が厳しさを増す中での新体制発足。デジタル化社会の到来や脱炭素化の進展など社会構造の変化を捉え、事業領域の拡大を図り、さらなる成長に向けた戦略を模索する。

まつだ・こうじ
1985年金沢大学経済学部卒、北陸電力入社。営業推進部長、エネルギー営業部長、石川支店長などを経て、2019年6月取締役常務執行役員。21年6月から現職。

志賀 直近で取締役を2年、また副社長を経験せずに社長に就任した初のケースと聞いています。今の経営環境をどう見ていますか。

松田 人口減少や少子高齢化が急速に進む中で、デジタル化への対応に加え、2050年カーボンニュートラルの実現や、30年のCO2削減目標の大幅引き上げなど、気候変動関連の変革は予想以上に激しく、私たちを取り巻く環境のゲームチェンジの気配を感じています。このような変化に直面している状況で、今回重責を担うことになり身の引き締まる思いです。そうした中、既存の電気事業をベースに電気事業の枠を超えて成長戦略をどう立てていくかが最重要課題です。

脱炭素化への挑戦 社の強みをフル活用

志賀 北陸電力の特色である水力発電の豊富さなど、自社の強みや弱みをどう捉えていますか。

松田 大きな強みである水力発電比率は全国平均1割程度に対し、当社比率は約3割を占めています。先人達が日本でも有数の急流河川をエネルギー資源とすることに苦心を重ねてきたおかげであり、気候変動問題を中心に脱炭素化への関心が高まるほど、この財産をしっかり生かしていく重要性が増していると思います。戦中・戦後の電力供給体制検討の際、当初案では北陸エリアは中部ブロックに属する構想でしたが、地域の後押しを受け、当社初代社長の山田昌作らが、北陸地域の気候・歴史・文化・風土は異なること、また、これまで努力し開発してきた電源を使って生活や産業が営まれ、北陸の経済圏は独立していることを力説し、北陸地域として独立することが認められました。こうした変化の時代こそ歴史の再認識が大切であり、今後の経営ビジョンにおいても地域を大切に思う気持ちをベースに、地域の課題解決に貢献し、地域とともに発展していくことが大事だと考えています。

志賀 カーボンニュートラルに取り組む中で、具体的に社の強みをどう発揮していきますか。

松田 近年、ゼロエミッションや再生可能エネルギー電気調達への関心やご要望が高まっており、エネルギー消費に関するニーズにもしっかりと応える必要があります。当社の財産である水力発電については、さらなる新設やリプレース、既存設備の改修に着実に取り組みます。さらに福井県あらわ沖での洋上風力発電、富山県朝日町での陸上風力発電の事業化をはじめとする再エネ開発に向けても積極的に動いていくなど、再エネ主力電源化に向けてはアクセルを相当踏まなければなりません。ただ、洋上風力は技術的、経済的な検討がまだ必要ですし、陸上風力や太陽光についても適地が減る中で土砂崩れリスクなどへの目配りも重要です。当社は30年度までに再エネ発電量を18年度対比で20億kW時増加させる目標を掲げています。うち、めどが立っているのは16.4億kW時です。目標達成に向けた取り組みを加速させるとともに、さらなる開発目標の拡大へ検討を進めていきます。

北陸電力グループ カーボンニュートラル達成に向けたロードマップ(概要)

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