【中部電力 林社長】社会の持続的な発展へ 新たな価値を創出するビジネスモデルを構築

2022年1月1日

戦略投資に約1兆円 4領域で海外事業強化

志賀 洋上風力の開発についても、積極的に進めていくようですね。

 日本の平地面積当たりの太陽光の導入量は諸外国と比べても一際高く、既に導入可能量の限界近くに達していますから、メガソーラーの開発余地はそれほど残っているわけではありません。今後は、お客さまの建屋の屋根や私有地への設置などが中心になっていくでしょう。

 陸上風力についても開発の適地はそう多くなく、長期的には洋上が主役になっていくでしょう。既に、長崎県五島市沖における浮体式洋上風力発電事業の事業者に選定されており、再エネの拡大目標の達成に向けた有望な電源の一つとして、全国で積極的に開発を進めていきたいと考えています。

志賀 海外事業についてはいかがですか。

 30年度までに実施する約1兆円の戦略投資のうち、再エネ事業に約4000億円、海外事業に約4000億円、そして「新しいコミュニティの形」を提供する事業への投資として約2000億円を計画しています。この約1兆円のうち、脱炭素化に関連する投資が大きな割合を占めています。

 海外においては一昨年、オランダの再エネを自社開発し電力を供給しているグリーンエネルギー企業Enecoに約1000億円出資しましたし、昨年はベトナムの民間水力発電大手のビテクスコ・パワーにも資本参画しています。Enecoについては、再エネ先進国である欧州において洋上風力の技術やノウハウ、あるいは再エネを調達し供給する手法を持っており、学ぶべき点は多くあると期待しています。また、この他にも、ウガンダ、モザンビーク、スリランカ、ミャンマーなどでコンサルティング事業を手掛けています。

 海外事業の展開にあたっては、再エネなどのグリーン領域、水素・アンモニアやCCS(CO2の回収・貯留)などのブルー領域、小売り・送配電・新サービス領域、そして新技術領域の四つの領域を組み合わせ、最適なポートフォリオを形成することで、ロシアを含む欧州とアジアを中心に脱炭素につながる事業への投資を拡大していきます。

志賀 DX関連の投資はどのようなことを念頭に置いていますか。

 DX関連投資は2種類あります。一つは業務変革を目的とした投資、もう一つは新しい価値を創造するための投資です。前者については、効率化や働き方改革を進めるためのシステムの導入を進めていきます。後者は、たとえばスマートメーターを活用したエネルギーデータとパートナー企業のデータをかけ合わせることで、付加価値の高いサービスを提供していくことを目指していきます。

 電力ネットワークを通じてお客さまとつながっていること、そして多くのお客さまから信頼をいただけていることは中部電力の大きな強みです。また、中部エリアにはアライアンスを組める優秀な企業が多くありますから、そうしたつながりを大事にしながら新しい価値を提供できるビジネスを創出していきます。

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