【関西電力 森本社長】新たな関西電力創生へ 業務改善計画に魂入れ完遂する

2020年9月2日

志賀 新しいビジネスへの期待が高まる一方で、エネルギー事業者間の価格競争がし烈化しています。 

森本 当社は、巨大なシステムの中で電力の安定供給を担ってきましたが、再エネなど分散型電源が増えた今は、エリア内でのエネルギーの有効活用や、事業所内での最適運用といったニーズが高まっています。そうしたニーズも含め、エネルギーを上手に使っていただく新しい商品メニューを提供していかなければなりません。現在のように、供給力に余裕があって電力価格が安い状況では、価格競争に陥り設備を持たない人が圧倒的に有利です。容量市場などの開設により、一定の改善は期待していますが、価格だけではない商品サービスやパッケージ、エネルギーマネジメントを駆使したビジネスモデルで、価格競争から脱却していく必要があります。 

海外の系統電力が弱いところなどでは、自家発を中心としたローカルエネルギーで供給しなければなりません。当社は、海外にも事業展開し、途上国に進出した日系企業のエネルギーマネジメントなどを請け負っていますが、こうした動きが今後、さらに加速していくのではないかと考えてます。 

志賀 今後、各事業者が自社の特性を生かした生き残り策を模索することになると思いますが、関電の主戦場は日本全国であり世界ということですね。 

森本 もともと関西エリアだけではなく、再エネの電源開発など、お客さまのビジネスを広域的にサポートすることで多くのメリットを提供できると認識しています。関西のみならず日本全体で選んでいただける会社になりたいですし、海外でも発電・送電・配電・小売りの全ての事業を展開していきたいと考えています。 

収益拡大へ海外事業にも力を入れる(米国テキサス州) 

志賀 最後にもう一度、経営改革に向けた意気込みをお聞かせください。 

森本 失われた信頼回復に向け、今後も、たゆまぬ改革を進めていかなければなりませんが、そのためにも、引き続き、社内外の方たちとコミュニケーションを重ねその声に謙虚に耳を傾けながら、さまざまなアイデアや意見を取り入れつつ、前例にとらわれることなく改めるべきことは改めていきます。こうした信頼回復の取り組みに加えて、新型コロナの影響により、社会全体のありようが大きく変化する中で、中期経営計画で掲げた「目指す姿」を実現していくために、どのような手立てを講じる必要があるのか、中期計画の見直しを含め、検討を深めていきたいと考えています。こうした取り組みを一つひとつ積み重ねていくことで、社会の皆さまから再び信頼を賜り、持続的な成長を果たしていく「新たな関西電力の創生」に力を尽くしてまいります。 

志賀 新生関電の底力が試されています。本日はありがとうございました。 

対談を終えて 
金品受領問題などの不祥事で失墜した社会からの信頼の回複に覚悟をもって取り組む決意で社長に就任した。経営刷新本部の立ち上げ、業務改善計画の策定、指名委員会等設置会社への移行と矢継ぎ早に手を打ち、株主総会で多数の支持を得た。再建には経営層に対する社員の厳しい意見を謙虚に聞くことが必要と認識。多くの社員と同じくエネルギーの安全・安定供給に携わる者の誇りを土台に新たな関西電力創生に魂を入れる。(本誌/志賀正利) 

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