【電事連会長・九州電力 池辺社長】電気事業を通じて経済の持続的発展に貢献

2020年10月2日

高いゼロエミ比率 より原子力が重要に

志賀 本年からエネルギー基本計画の見直しに向けた議論が始まります。

池辺 現行のエネルギーミックスでは、30年にゼロエミッション電源比率44%を達成することが求められています。九州では「再稼働した原子力の安定運転」「昼間帯における火力発電の柔軟な運用」や「揚水ポンプアップ機能を最大限活用した太陽光発電の導入量拡大」などに取り組むことで、19年度のゼロエミッション電源比率は58%(FIT電気14%を含む)となり、国の30年の目標である44%を超え、国内のトップランナーとなっています。

志賀 世界的な脱炭素化の潮流を踏まえると、次期エネルギー基本計画において、30年時点のCO2排出削減目標の深掘りは避けられそうにありません。

池辺 CO2排出のさらなる削減を進めることやエネルギーセキュリティーを確保していく観点から、今後は原子力の重要性が一層高まると考えています。

現行のエネルギーミックスでは30年の原子力比率20~22%が目標であり、実現によってゼロエミッション電源比率44%にも大きく近付きます。私は、既設炉を最大に有効活用することでこの目標を達成できると考えています。CO2排出削減のために、次期エネルギー基本計画においても、事業者が安全性を確保することを前提に、原子力比率を維持することが極めて重要になります。

志賀 再エネの導入拡大も求められそうです。

池辺 CO2排出をより削減するためには、再エネのさらなる導入も必要となるでしょう。それに合わせて、調整電源としての火力の役割も重要になります。

3E+Sの観点でバランスの取れたエネルギーミックスの目標値が設定され、その実現に向けて適切な事業環境が整備されるよう、国や関係機関にお願いしたいと思います。

電力業界の課題 力合わせて解決目指す

志賀 今年3月に勝野哲・中部電力社長(現会長)からバトンタッチを受け、電気事業連合会会長に就任されました。現在の電力業界の課題をどう考えていますか。

池辺 地球温暖化対策、電力レジリエンスの強化、コンプライアンスの徹底など、さまざまな課題が山積しています。私ども電力会社は電気事業を通じて、わが国の経済の持続的発展とともに、人口減少、高齢化社会、デジタル化・分散化などへの対応といった社会的課題の解決にも貢献していきたいと考えています。

特に地球温暖化防止に向けて、「電化の推進」や「電源の低炭素化」といった需給両面からの取り組みが重要となります。次期エネルギー基本計画においても重要なポイントになるのではないでしょうか。九州で使われるエネルギーのうち、22%は電気として使われています。残りの78%はガスや石油などによるもので、CO2の排出を伴います。電気は再エネや原子力で発電すればCO2を出さないので、需要面で電化を推進するとともに、供給面においても、再エネや原子力の活用、火力の高効率化など、電源の低炭素化に引き続き取り組みます。

電力各社の社長と力を合わせて諸課題を少しでも解決し、国民生活の向上に貢献できるよう、全身全霊で取り組んでいきます。

川内原子力発電所の特重施設建設工事は9割程度が完了している

志賀 原子力については、電事連の果たす役割がより増していくと思います。

池辺 CO2削減と安定供給確保の観点から重要な原子力発電については、一日も早い再稼働に向けて、審査に真摯に対応するとともに、自主的かつ継続的な安全性の確保に取り組んでいきます。

また、原子燃料サイクルは、再処理事業の着実な実施や中間貯蔵・乾式貯蔵などの使用済燃料対策、プルサーマルによるプルトニウムの適切な管理と利用、最終処分への理解の拡大と円滑な実施などを、総合的かつ整合的に進める必要があるため、それらに、しっかりと対応していきます。

志賀 再エネの主力電源化にはどう対応しますか。

池辺 再エネ主力電源化についても、日本版コネクト&マネージを進めることで、系統側への受け入れ拡大に協力していきます。電力レジリエンスの強化に資する託送料金制度改革などについては、エネルギー供給強靭化法の成立を踏まえ、引き続き、具体的な制度設計が進められていくものと思います。持続的な安定供給に資する制度措置の実現に向けて、電気事業者として協力していきます。

志賀 ありがとうございました。

対談を終えて:これまで経験したことのない猛烈な台風が九州地方を襲うという気象庁の警報に社を挙げて対策を講じた結果、停電の復旧も迅速に対応できたと胸をなで下ろす。発送電分離で会社の有り様は大きく変わったが、事業の社会的役割に変わりはないとキッパリ。温暖化対策の切り札は、再エネと原子力で作られる電気の利用拡大であり、再エネ拡大には石炭火力電源が欠かせないと。原子力は核燃料サイクル路線の堅持を表明し、電気事業経営の王道を歩む。電事連会長としても頼もしい。(本誌/志賀正利)

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