【中部電力 林社長】新たな価値創出に挑戦し 社会課題の解決と持続的な成長を実現する

2020年12月28日

2020年4月、事業体制を3つの会社に分社化するという大きな節目に社長に就任した。エネルギーの安定供給のみならず、社会課題の解決に資する新たな価値を提供することで、企業価値の最大化を目指す。

志賀 電力業界が大きく変わろうとしている中、2020年4月に社長に就任されました。入社された当時は、このような大変革を予想もしていなかったのではないでしょうか。

 私が中部電力に入社した当時のイメージは、電気を安定的に供給することで世の中の役に立っている会社、そして規制産業であるゆえに経営が安定している会社というもので、現在のように、電力自由化が進み、激しい市場競争を繰り広げることになろうとは想像していませんでした。また、当社は20年4月に「中部電力」「中部電力パワーグリッド」「中部電力ミライズ」の3社体制となり、約70年ぶりに会社形態が変わりましたが、これも、当時想像できなかった大きな変革です。一方で、エネルギーを常時安定的にお客さまにお届けするという役割、そしてそれが当社グループにとって一番大切なことであるという社員のマインドは、当時も今も変わることはありません。

はやし・きんご
1984年京大法学部卒、中部電力入社。2015年執行役員、16年東京支社長、18年専務執行役員販売カンパニー社長などを経て20年4月から現職。

震災が突き付けた 業界の変革の必要性

志賀 特に印象に残っているエピソードはありますか。

林 さまざまな出来事がありましたが、やはり11年の東日本大震災は大きな転機となりました。震災発生時は、長野支店の営業部長で、まだ被災状況の把握もままならない中で、配電部門の従業員を復旧応援のために被災地に送り出しました。お客さまのために、そして電力業界の仲間のために、何としても電力供給の使命を果たすという熱い想いを持って現地へ赴いてくれた彼らの姿は、今も忘れることができません。

 その後、5月に本店の企画部門に異動となり、浜岡原子力発電所が停止する中で中部電力の事業をどう再構築すべきかが議論になりました。その結果、関東地区での火力発電事業への参画や、大阪ガスとの米国のフリーポートLNGプロジェクトへの共同出資など、これまでの事業とは非連続とも言える事業展開や、営業エリアの垣根を超えた取り組みを行うことになりました。電力供給のような何があっても守り続けるべきものと、過去の価値観や発想を抜本的に変えていくという、2つの相反する考え方を強烈に心に刻んだのがあの震災でした。

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