【中部電力 林社長】新たな価値創出に挑戦し 社会課題の解決と持続的な成長を実現する

2020年12月28日

志賀 分社化では発電・販売一体ではなく、分離型の事業モデルを選択しました。これまでの評価と今後の方針について教えてください。

 東京電力を除く他の大手電力会社が発販一体型の事業モデルを選択する中、当社は発販分離型の事業モデルを選びました。両者には当然、メリットとデメリットがあります。そして、発販分離型の大きなメリットが、事業部門ごとの意思決定の速さにあると考えています。

 また、例えば小売り会社では調達と販売を自己完結できるなど、各事業会社ごとに、自らの仕事のパフォーマンスが明確となりPDCAサイクルを回しやすくなります。社員にとって、仕事の成果が目に見えて分かることはやりがいにつながりますから、これは大きな効果だと思います。

 一方、燃料事業や海外発電事業などにおいては、エネルギーを国際市場で安く確実に調達するために存在感を高めることが重要です。19年4月に、東京電力との共同出資で両者の燃料事業と発電事業を承継するJERAを設立しましたが、それぞれで調達するよりも、バーゲニングパワーを発揮することができますし、両社の得意、不得意を補完し合いシナジー効果を発揮できます。

 今後も、各々の事業がお客さまや市場と向き合いながら自律経営を実践するとともに、さまざまな環境変化に対し、自ら機動的な対応を行っていくことで、グループ全体で企業価値の最大化を目指していきます。

志賀 送配電分離をきっかけに、多くの人がこれまでの電力会社の役割を継承するのは送配電会社であると言っていました。しかし最近になってようやく、電気と合わせて社会的な価値を提供する小売り会社も新しいスタイルのエネルギー事業であるという意見も増えてきたように思います。

林 それぞれの会社には、それぞれの役割があります。これまで、当社は電源における原子力の構成率が低く、ほかの大手電力と比べてCO2排出係数や料金単価が高くなりがちでした。価格やCO2価値で劣後するのであれば、他社にはない「価値」を提供しようと、当社販売部門では、これまで、電気に価値を付加するソリューション営業を重視してきました。2000年からは、営業部門に技術系社員を配置し、お客さま設備の設計や施設の建設などの初期段階からかかわることで最適なエネルギー利用を実現しています。現在は、約200人を超える技術系社員が営業の最前線にいます。

2020年4月に3社による新たな事業体制がスタートした

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