【中部電力 林社長】新たな価値創出に挑戦し 社会課題の解決と持続的な成長を実現する

2020年12月28日

新ビジネス創出へ 他サービスと融合

志賀 今後、小売り分野ではどのような新しいビジネスモデルを展開していくお考えですか。

 当社グループが持つエネルギー流通インフラと、パートナー企業が持つデータを活用した新たな価値創造のためのサービスを融合することで、新ビジネスを創出できると期待しています。例えば、20年6月には、慶応義塾大学病院と医学部発ベンチャー企業のメディカルデータカード社と共同で、産科の遠隔健診および健診を支援するシステムの運用を開始するなど、コロナ禍を踏まえ、お客さまや社会のニーズに合致する新たなサービスのご提供を開始しました。将来は、スマートメーターから得られるお客さまの電気の使用データから生活パターンを分析し、医療データと組み合わせることで未病のための生活提案なども可能になると考えています。実は、20年の株主総会で銀行業・保険業を定款に加えました。医療データと生活パターン、そして保険会社の商品を組み合わせることで、保険料を安く抑えたサービスをご提供できるようになるかもしれません。

 中部電力グループは、エネルギー事業を通じてお客さまや社会と広く接点があるため、その接点を最大限活用することで、引き続き、快適な室内環境の実現から、ヘルスケア・介護・見守り・省エネ、そして地域の防災や防犯などに至るまで「つながることで広がる価値」をエネルギーサービスとセットで提供し、社会課題の解決に貢献しつつ収益拡大を目指していきます。まさに、コーポレートスローガンである「むすぶ・ひらく」を大切にしてまいります。

志賀 電力・ガス小売り市場における競争はますます激化しています。今後の重点施策や目標についてお聞かせください。

 中部電力グループの販売事業会社である中部電力ミライズとしては、引き続き、お客さまのニーズをしっかり捉えたサービスを提供していくことで、「価格」と「サービス」のトータルでお客さまにご評価いただきたいと考えています。エネルギー需要が伸び悩み、競争は一段と激化する中ではありますが、首都圏を中心とした中部エリア外販売を加速し、20年代後半には年間1300億kW時の販売電力量を維持していきます。

 競争を勝ち抜くためには、ご家庭のお客さまには「暮らしに関わるあらゆるサービスをそろえていくこと」、企業向けには「お客さまの抱える経営課題も含めて解決を図ること」を目指し、お客さまのニーズにあったサービスを、お客さまの必要な時にお届けします。こうした取り組みを加速することが、社会の変化への対応・社会課題の解決にもつながり、これまでにない新しい「総合サービス企業」としてお客さまに選択していただけるものと考えています。

脱炭素化への挑戦 ビジネスチャンスに

志賀 菅義偉首相が2050年脱炭素化社会実現を掲げました。どのように受け止めていますか。

 菅首相が掲げた「温室効果ガスの排出を50年までに実質ゼロにする」という目標は、30年後とはいえ極めてチャレンジングなものと受け止めています。脱炭素化とは、社会構造の変革を目指すということです。社会構造と産業構造の変化に乗り遅れないよう、日本を変えていくために脱炭素化社会の実現は必要なことであり、そこにビジネスチャンスが生まれます。

 その達成には、抜本的な革新的技術を生み出すイノベーションが重要であるとともに、電源の脱炭素化、強靭で高効率なエネルギーシステム構築、そしてお客さまのエネルギー利用の省エネ・電化など、社会インフラ全体の効率をより一層高めていく必要があります。電力会社の取り組みにとどまらず、社会として電化をどう進めていくかが、これからの大きなテーマになっていくのではないでしょうか。

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