【中国電力 清水社長】成長領域での利益拡大へ エネルギービジネスの 新たな可能性を追求する

2021年7月6日

高い評価で好調 地域密着型サービス

志賀 小売り全面自由化から5年が経過しました。現在の競争環境をどのように見ていますか。

清水 中国地域においては、低圧・高圧ともに100社を超える事業者が活発に営業活動を展開しており、厳しい競争環境にあるものと考えています。こうした中で、家庭から事業用までエネルギーに関する多様なニーズに対し、当社グループ全体で付加価値の高いサービスを提供し、事業基盤である中国地域のお客さまに引き続き選択していただくことを目指します。

 会員制ウエブサイト「ぐっとずっと。クラブ」や、新料金メニュー「ぐっとずっと。プラン」の加入状況は、4月1日時点でウエブ会員が約118万口、新料金メニューが約133万口です。当社ならではの地域密着型サービスが、お客さまから高い評価をいただいた結果だと受け止めています。これらサービスについては、人気お笑い芸人の千鳥などを起用し、テレビCMなどでPRしています。

 中国地域外においては、価格競争力のある料金メニューや付加価値の高いサービス展開でさらなる収益の拡大を目指しています。高圧以上については、市場規模の大きい首都圏や関西地域を中心とした営業活動の強化により、中国地域外における収益基盤の拡大を進めていきます。低圧分野は、首都圏において事業を展開していますが、事業の収益性、市場の動向、お客さまからのご要望などを総合的に勘案しながら販売エリアの拡大についても検討していきます。

             千鳥と松本穂香を起用したキャンペーンのポスター

「環境」と「成長」両立 海外でも事業機会拡大

志賀 新事業創出の取り組みについて教えてください。

清水 社会の在り方自体が大きく変化していく中で持続的に成長していくため、グループ経営ビジョンでは成長領域での利益拡大を掲げています。再エネ導入を含めたエネルギー事業はもとより、特定の事業領域や地域に限定せず、多様な事業分野で、新たな成長機会の創出に挑戦していきます。

 新たな領域には、「エネルギア創造ラボ」で次世代エネルギー、ベンチャー投資、オープンイノベーションに取り組んでいます。

 次世代エネルギーの分野では、太陽光発電や、蓄電池などを活用した分散エネルギーサービスの開発を進めています。政府のカーボンニュートラル宣言以降、お客さま意識に大きな変化を感じており、ニーズへ迅速に対応し地域のカーボンニュートラル実現へ貢献していく考えです。

 また、地域活性化をテーマに、デジタルトランスフォーメーションなど独自の技術・サービスを持ち地域の課題解決につながるベンチャー企業への投資も進めています。20年度は6件の出資を行いました。財務リターンの獲得と併せ、投資先の紹介やサービス提供で課題解決をお手伝いすることで地域貢献にもつなげる考えです。さらに、ベンチャー企業などとのオープンイノベーションによる新たなビジネス創出も進めていきます。

志賀 海外事業の動向はいかがですか。

清水 海外事業を利益の一角を担う事業に成長させていくため、「環境」と「成長」の両立を念頭に、再エネやガス火力など多様な発電方式の案件獲得に積極的に取り組んでいます。なお、従来型の石炭火力については、着手済み案件を除き、新たな事業には参画しないこととしています。

 最近の出資状況ですが、本年3月にフィジー共和国において発電、送配電、小売りの各事業を一貫して担う垂直統合型の電力会社に出資参画しました。海外の電力会社への出資は初めてで、非常にチャレンジングな取り組みですが、フィジー共和国の発展に関わる重大な責任を担うことになったと受け止めており、グループを挙げて取り組むことで期待に応えていきます。

 このような海外での取り組みを通じて、さまざまな知見やノウハウを獲得し、国内外における事業領域の拡大につなげていきたいと考えています。

(この対談は、5月末に行われたものです)

対談を終えて:政府が2050年脱炭素社会の実現を目標に掲げる中でも、「S+3E」の観点から特定の電源や燃料に依存しない電源構成の必要性を強調。環境と安定供給の両立のため、再エネ導入拡大や原子力の早期再稼働と合わせて、火力分野のカーボンフリー技術の開発・導入にも力を注ぐ。新たな収益基盤の構築に向け、エネルギー事業にとらわれず多様な領域での成長機会の創出を模索。持続的な成長へ果敢に挑戦しようという強い意思がうかがえる。(本誌/志賀正利)

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