【北海道電力 藤井社長】地域資源を有効活用し オール北海道で脱炭素社会の実現目指す

2021年12月2日

志賀 具体的にどのように取り組んでいきますか。

藤井 7月に、北海道ガス、JR北海道、セイコーマートなど当社からお声がけした道内8社と当社が発起人となり「北海道水素事業プラットフォーム」を設立しました。同プラットフォームは、民間企業が有する知見・技術をオープン・シェアの精神で結集し、北海道における水素社会・カーボンニュートラルの実現を目指したさまざまなプロジェクトを創出するための民間企業の連携の場であり、北海道では初めての組織体です。

 設立以降、水素事業に関心の高い道内企業や、水素に関する知見・技術を有し北海道で水素事業などを展開したいと考えている道外企業にもお声がけし、9月現在で道内外計33社に参加いただいています。今後も、道内企業のアイデアやニーズと道外企業の知見・技術を結びつけ、水素・脱炭素に係るさまざまなプロジェクトを創出することにより、北海道における水素サプライチェーン構築を早期に実現し、将来的には北海道が国産グリーン水素製造・利活用のパイオニアとなるべく取り組みます。

洋上風力の余剰を活用 水素製造に向け調査

志賀 石狩湾新港における洋上風力の余剰電力による水素製造、利活用に向けた調査事業もその一環でしょうか。

藤井 同じく今年7月、グリーンパワーインベストメント(GPI)、日鉄エンジニアリング、井本商運、エア・ウォーター、京セラコミュニケーションシステムとともに、水素製造・利活用ポテンシャル調査に係るNEDO委託事業を受託しました。

 これは、GPIが石狩湾新港で建設中(23年度運開予定、約10万kW)の洋上風力発電所から発生する余剰電力を活用した水素製造を見据え、「大規模洋上風力発電所」「大規模蓄電池」「水電解装置」の一体的な運用による効率的な水素製造と、石狩市・札幌市などの地元地域での水素利活用、道内外への水素輸送について、技術・経済・制度などの課題を抽出する取り組みであり、本格的な商用洋上風力発電所の余剰電力での水素製造を、フルスケールで実現することを目指す国内初のケースです。

 北海道は豊富な再生可能エネルギーの導入ポテンシャルを有していますが、再エネの導入を進めるためには、系統制約に伴う出力制御、これに伴う再エネ発電事業の採算性悪化への対応、また道外へ輸送するための莫大なネットワークコストなどが課題となります。余剰電力を活用した水素製造の事業性を確立することで、これらの課題を解決し、道内ひいては国内のカーボンニュートラルの実現にも貢献できればと考えています。

志賀 電源の脱炭素化に向けては、CCUSの技術確立も欠かせません。どのように取り組んでいきますか。

藤井 8月にIHI、JFEエンジニアリングとともに、火力発電所におけるCO2分離・回収およびパイプライン輸送に向けたNEDOの調査事業を受託しました。CCUSの社会実装に向け、大型の商用石炭火力発電所からのCO2分離・回収技術や、回収したCO2を利用可能とするための集約技術について、検討および課題整理することを目的に苫東厚真発電所を対象に実施しており、当社は、発電所の出力変化運転に対応したCO2分離・回収設備の最適な運用方法の検討と課題の整理、石炭火力に適用するCCUSのコスト検討を行っています。

CCUS社会実装に向け調査を行っている苫東厚真発電所

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