【日本原電 村松社長】地域の理解を得るとともに 技術革新に挑戦し 脱炭素社会に貢献する

2022年4月2日

志賀 小型モジュール炉(SMR)の可能性についてはどう評価していますか。

村松 海外では、SMRの研究開発や建設計画が進められており、国内でも経済産業省公募によるSMR開発を含む革新的な原子力技術開発支援事業が行われています。

当社は、19年度からSMR開発に取り組む国内メーカーなどに対し、コンサル事業などにより事業者の視点から技術協力を行うとともに、国内導入時の課題(規制、経済性など)の調査を実施しており、メーカーなどへの協力を通じて調査を継続していきます。

志賀 原子力での水素製造について何か取り組んでいることはありますか。

村松 当社は「経営の基本計画」において、事業基盤の強化策の一つとして、原子力分野のイノベーションへの挑戦を掲げており、その一つに「原子力を通じた水素社会への貢献方策の検討」を挙げています。海外の原子力を利用した水素製造の技術・評価・考察例や国内の水素製造・利用についての調査を通じ、国内外の動向を把握しているところです。

技術力・人材確保へ 原子力の担い手育成

志賀 原子力開発を支援する政策、制度への期待はありますか。

村松 新増設・リプレース政策と一体で、投資回収を支援する仕組みが必要です。英国が最も進んでおり、35年間の固定価格買い取り制度を設け、建設期間が延び投資回収が先送りされたとしても一定の補償を得られる仕組みになっています。

 また、50年カーボンニュートラル実現のためには、将来にわたって原子力発電を活用するとともに、産業基盤を維持していくことが不可欠であり、その中核である技術力・人材を国内で確保し続ける必要があり、そのための支援をしていただけるとありがたいと考えています。原子力発電の運転経験のない者への技術の伝承や、原子力関連企業の技術者や将来を担う学生たちの人材育成が重要です。  当社は、1968年に茨城県東海村にて研修業務を開始して以降、50年以上にわたり、原子力に関わる訓練と人材育成の経験と実績を持っています。現在は東海総合研修センターの運営に加え、福井県敦賀市にも敦賀総合研修センターを開設し、今年10月で開設10周年を迎えます。両総合研修センターでは、原子力発電所の運転経験のない者への訓練や育成を行う他、国内の技術者や学生、海外からの研修生などを対象とした原子力発電所の運転、保修、廃止措置に係る人材育成に取り組んでいます。

志賀 ロシアによるウクライナ侵攻を機に、原子力発電の本来の必要性が改めて見直されることが期待されています。原子力専業会社として頑張っていただきたいと思います。

村松 しっかりと、原子力プラットフォームの役割を果たしていきます。

対談を終えて
専業企業として原子力プラットフォームの役割を果たしていくと、力強く語る。第六次エネ基では原発の役割が明記され、最近は再稼働に向けた環境が前進していると評価。東海第二と敦賀2号の再稼働への対策を着実に進めるべく、社内外の取り組みに工夫を凝らす。敦賀3、4号は、次のエネ基で原発新増設・リプレースの方針が示されることになれば優先順位の高いプラントと自覚。核燃料サイクルや高速炉、SMR(小型原子炉)、水素製造等次世代領域にも意欲を見せる。(本誌/志賀正利)

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